るるむく日記

趣味にひた走るつれづれの日々

オレンジと太陽

オレンジと太陽観てきました。

「オレンジと太陽」は、英国のソーシャルワーカー、マーガレット・ハンフリーズさんの、「Empty Cradles」(邦題:からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち)を元にした映画で、テーマは英国の児童移民です。

かつて行われていたイギリスの児童移民は、送り出した側の英国と、受け入れた側の国とのそれぞれの思惑の上に推進され、弱い立場の子どもたち(孤児だったり、親元で育てがたい状況だったり)が、口当たりの良い言葉で送り出され(良い家庭で大事育てられるから、とか)、実際は労働力として消費されたり、劣悪な環境の児童福祉施設で虐待を受けて育つような事になってしまいました。マーガレットさんはかつての児童移民の方からのコンタクトを受けて調べはじめ、それまで認識されてこなかった児童移民について調査を進め、「元児童移民」の方々の失われた過去を取り戻す手助けと、政府に対する責任追及を行っていくのです。

映画ではこの「からのゆりかご」が映画としてうまく映像化されていたと思いました。家族を奪われ、自らのアイデンティティを失ったまま育った元移民児童たちの、それぞれにそれぞれが傷ついた様子、家族を取り戻せた人、間に合わなかった人、それぞれの想いが観る側に伝わってきました。

失われたものを取り戻す手助けをする、物事に、人々に真摯に向き合うマーガレットさんをエミリー・ワトソンがゆるぎない瞳で演じていてとても印象的でした。
母と引き離された事が、トラウマとなって、うまく自分の家族を作れず、成人してもどこか脆さの見えるジャックをヒューゴ・ウィービングが繊細な表情で演じて見せてくれていますし、また移民後に虐待を受け、それでも自らの才覚で財を成し、外から見れば成功者であるものの虐待の過去と母に捨てられた事の折り合いがついてないレンの、ささくれだった感情や、それでも失っていない乾いたユーモアをデイヴィッドが魅力的に演じてみせてくれました。

とても丁寧に作られた映画で、ドキュメンタリーではない、事実に基づいた映画として楽しみながら、心を揺さぶられながら観ることができてとても良かったです。

映画では児童移民が行われたそもそもの背景がさらっと流されていたり、ほかの国への児童移民の話は割愛されていたので、原作の「Empty Cradles」(邦題:からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち)

からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち

を読むとさらに映画が味わい深いかなと思いました。