るるむく日記

趣味にひた走るつれづれの日々

Letters of Tolkien No.94


Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

 

 

94:1944/12/28 (FS71) クリストファー・トールキン宛て

 

おまえからの手紙をたくさん受け取った。3つ目の「指輪」がそちらに届いてお前が気に入ってくれたのはうれしい。残念ながら、次の二つの章はしばらくの間送れない(一月の中旬くらいまで)。これら二つの章がー4巻の残りと同じくらいできがよいものとは考えていないがーお前の航空乗務員部屋の雑音を紛らわしてくれれば大成功だ。

こちらのクリスマスの天候は深い霧で、ひどく寒く、白霜に覆われていた。昨日は、白霜がより厚くより素晴らしかった。太陽のきらめき(11時ごろ)がそこを通ったとき、息をのむような美しさだった。

 

先日、下院のエデン氏が’民主主義の発祥の地’ギリシアでの出来事に痛みを表明した。彼は無知なのか、偽善的なのか?

δημοχρατìα は、ギリシャ語では承認の言葉ではなく、およそ、「衆愚政治」に等しい。

 

 

ということで年が変わる直前の手紙。クリストファーさんからまとめて手紙が届いたようで、やはり戦地とのやりとりは通常とは異なって、滞りがちなんでしょうね。指輪の草稿を送ったことについてのやりとりに、少し「人生と文学との差異」についてのコメントなど挟んで書き送るあたりは教授らしい。

そしてイギリスの寒さと、その冬の庭の美しい様子とが読んでいて楽しい。

蒼白い半透明の青、頭上高く、黄金の光を背景にして、木々は動きのない、白いしぶきの枝の噴水のようだった。夜の11時ごろ、霧は晴れ、高く、丸い月が、死んだような白い光で、すべての情景を照らしていた。なにか他の世界、ほかの時代のような情景だ。