るるむく日記

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Letters of Tolkien No.96


Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

 

 

96:1945/1/30 (FS78) クリストファー・トールキン宛て

 

 

この手紙は私には長く、そして難しい手紙で、この一通にだいぶ時間がかかってしまいました。そして時間をかけた割に今一つモノにしていないという・・・。しかしそうこうしているとこの先がまったく見えなくなってしまうので、力任せではありますがとりあえず終わらせ、あとからまた振り返って読み直ししないとなあ、と思っています。

手紙の中身はおよそ四つで以下にちょっとまとめてみました。

 

1:教授の近況

小さな患い事(教授はSlubgobのひなのいたずら小鬼と評している)の始末をした後モードリンに出かけ、その後皆でMitreへ行って、ビールと暖を得た。

H.C.ワイルド教授が亡くなったのでその後任を決めなければいけない。

夕食の時間ごろに晴雨計が下がり、ひどい雪が降りはじめた。翌朝、もろもろを掘り出してから出かけねばならず、講義に遅れてしまった。(‘Skegness’の漁師の装いのような盛装をして出かけ、「いわしを取っていたせいで」、と謝罪した、というのは教授の冗談なのでしょう、長靴+レインウェアだったのかな?)

その夜は鳥と赤子亭の会合があった。(鳥と赤子亭の帰り道で氷と半どけの雪のまじったもの中で三回転んだ、とか雪と排水溝の掃除に時間がかかったとか、やはり冬のイギリスはたいへんそう)

 

2:キリスト教信者としての教授の考え

エデンについて考えている。ほとんどのキリスト教信者(現代の)は「創世記」を彼らの心の中の物置小屋に押し込める、はやりの家具でないもののように。その結果、彼らは本当に「物語として」の美しささえ忘れてしまう。

ルイスは最近、とても興味深いエッセイを書いた。

彼の要点は、彼らはまだ何らかの方法で栄養を得ており、人生の樹液から完全に切り離されていないということだ。:物語の美しさは必ずしも真実の保証ではなく、それに付随するものであり、フィデリは真実と同様に美しさから栄養を引き出すことを意味している。

私はエデンの「神話」において、恥も、疑いも感じることはない。

もしおまえ(クリストファー)がエデンについて考えてみるようになるとすれば、おまえのまさにその鷹の愚かな殺害の恐怖や、おまえの牧歌的な時間ーの「故郷」への執拗な記憶は エデンに由来しているのだ。

私は「ミレニアム:聖人によって治められる予言された1000年」は存在するだろうと考えるー
すなわち、不完全さ示す人は、最終的に、心と意志を決して世界や邪悪なものに屈しない。

 

3:指輪物語について

私はお前が、「指輪」はその「規範」を保てている事と、長い物語においては難しい事ーたやすく「同じように」なるかもしれない出来事のそれぞれの特性と雰囲気を維持することー、を達成しているようだという事を、感じ取れるというのをうれしく思う。

私は、サムの演説と、フロドがサムの胸で眠りについたその場面、ほんのわずかの悔い改めと共にやってきて、しかしサムからの非情な一言をうけた、ゴラムの悲劇の光景に心を動かされた。

二つの強く異なる情動がある。一つは私を最大限に感動させ、消え去った過去の心を揺さぶる感覚を呼び起こすのが少し難しいことがわかる。もう一つはより「普通」の登場人物の悲劇、悲哀、勝利、感情だ。

私が自分の物語の登場人物を知るにつれ、学んでいる、しかし実際それほど私の心に近くはない。

物語は語られねばならない、そうでなければそこにはまったく物語がないだろう、しかしながら、最も心を動かすものは語られない物語だ。

私はお前は「ケレブリンボール」の物語に心を動かされると思う。なぜなら、それは終わりのない語られない物語群の思いがけない観念をもたらすからだ。

 

4:手紙の締めと昨今の世界情勢について

もう夜の9時で、書かねばならない手紙や明日の講義の準備もあり手紙を終わらせねば。お前が書いてくれたこまごました全ては読んでいる。

ロシア人たちが、ベルリンから60マイルのところまできているというニュースをちょうど聞いたところだ。

この戦争のぞっとするような破壊と悲惨さは絶えずしかけられている。

人々は、道の半ばで死にかけながら「西」へ流れ出てくる、40マイルに及ぶみじめな難民たち、女子供たち、(のニュースを?)をほくそ笑みながら聴いている。

そこには、慈悲の心や深い思いやりはなく、想像力もないように思われる。

ドイツの破壊は - 100倍の価値があるとしても - 最もぞっとする世界大惨事の一つだ。

「第一次機械戦争」は最終的な決定的ではない章に向かっているようだ。

ーああ、誰もがより貧しくされ、多くが先立たれ、障害を残され、何百万が死んだ。
たった一つの勝利したのは「機械」だけだ。

 

父からのすべての愛をこめて

 


 

と、なんか読んでいくうちに頭がとっちらかってしまい、グダグダになってしまいました。指輪物語に関して、ケレブリンボールの物語に心を動かされるというのは、いわゆる指輪本編ではなく、ケレブリンボールのサウロンに騙されたことや、3つの指輪を作ったことや、その後の悲劇的な人生、といった教授が物語として書き記さなかったけれど、そういう物語があっての指輪物語ですよ、というところなのだろうか・・・

 

また少し時間をおいてから読み返したいと思います。