るるむく日記

趣味にひた走るつれづれの日々

Letters of Tolkien No.109

 

Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

 

109:1947/7/31 サー・スタンリー・アンウィンへの手紙

 

トールキンは7月9日にロンドンでアンウィンと昼食を共にした。
そして、タイプでうった指輪物語のbook1をレイナー・アンウィンが見るべきだということに同意した。

7月28日にトールキンにレイナーの評言が送られてきた。

「寓話を感じさせる光と闇の争いは「ホビットの冒険」であったものより増大していて、もともとの「指輪」がこの新しく力強い道具に代わったことが、ある種の説明を奪い、ガンダルフは「ホビットの冒険」での行動の多くに理由を見いだすのが難しくなっている。

まったく正直にいって、どんな読者を想定したら良いのか自分にはわからない。・・・もし大人たちが、それを読む事で体面にかかわると感じなければ、疑いもなく多くの人々が楽しむだろう
校正係は省略された変更点のいくつかをただす必要があるーハミルカルからべリサリウスへ(フレデガー・ボルジャーの初期の名前)」

これらの批評と躊躇にも関わらず、レイナーはこの本を「すばらしく、心奪われる本」と判断した。

***********************

 

「指輪」のbook1が早く戻ってきて驚いた。レイナーの感想を送ってくれてありがとう。8月の末に別の一回分を送る予定でいる。

私はあなたたち両方への感謝をこめて、レイナーの短評に返答する。彼が圧伏されたと感じたことを残念に思う。 しかし、レイナーに、「寓意」を邪推させたくない
そこには「モラル(倫理)」ー私が思うにはーがある。語るにたるどんな物語の中にも。
しかし、それは同じことではない。
闇と光の間の苦闘(彼がそう呼ぶもの、私ではなく)でさえ、私にとっては単なる歴史上の特定の局面、その様式の一例であり、おそらく、しかし様式そのものではない。

もちろん、寓話と物語は一点に収束する、真実の中のどこかで出会って。不完全な人間の文学の中においてさえ、よりよき、そしてより普遍的な寓意はよりたやすく、「ただの物語」として読まれることができ、よりよく、そしてより緻密に編まれた物語は、それを気にしている人々が、よりたやすく、その中に、寓意を見つけ出すことができる。しかしその二つは、反対の端から始まるのだ。

あなたは、「指輪」を、もしあなたが好みなら、我々の時代の寓意に落とし込むことができる。
力によって、悪の力を打ち負かそうとする、すべての試みを待っている、逃れられない運命の寓意。しかし、それはただ、 すべての魔術的な、または機械的な力が常にそう働くゆえなのだ。

レイナーが、(「指輪」と「ホビット」の)つながりが全体としてよくなされていると考えていることを嬉しく思う。私は、私ができる一番のことをなした。

しかし私は「指輪」が現れたときよりもより重大なものになったということを心配していない。それは全てを簡単にする方法だ。

説明が必要なのは、ビルボの行動だけではない、私が思うにはだが。
弱さはゴラム、指輪を贈り物として差し出した彼の行動だ。
(脚注:ホビットの最初のオリジナル版の第5章では、ゴラムは実際、ホビットがなぞなぞくらべで勝った時にビルボに与えようとしていた。そして彼が指輪を失くしたと知った時、ひどく弁解した。)
しかしながら、ゴラムはのちに、最重要なキャラクターになった。そして私はガンダルフ心理的にわかりやすくすることををあてにできなくなった。

私はまだ、これを心の中で耐えなければならない、私が出版のために第二章を改訂するときにー私は、とにかく、それを短くするつもりだ。

 

前の本の知識が、前提とされるべきであるのは当然であるが、そこには序文か、もしくは冒頭の章である、「ホビットについて」がある。
それは、第五章の「くらやみでなぞなぞ問答」の要点を与え、
他の本の最初の2ページほどで供給された情報を語りなおす。
そのほかに、「ファン」が尋ねる多くの点を説明するーたばこや、警官や王様への言及について、そしてホビトンの絵の家々の外観。

 

ホビットの冒険」は結局のところ、思われていたようには単純ではなく、すでに存在していた世界から任意にむしろひきさかれたのだ、続編をつくるために新しく考案されたのではなく。

唯一の自由は、もしそれがそうならば、ビルボの指輪を「一つの指輪」にしたことだ。
すべての指輪は同じ根源を持っていたのだ、ビルボが暗闇の中で指輪を手にする前から。

恐怖はすでにそこに潜んでいた。
そして、エルロンドは分かっていたーどんな白の会議によっても、それら恐怖を払いのけることはできないと。

 

さて、私は自身の愚かな考えについてまったく十分に長く話してきた。

私は深く感謝している。これまで取り扱い、そして、大きな学びと才能の多くの人々と取引をしてきた忙しい人によって、真剣に取り扱ってくれたことに。
私はあなたとレイナーの良い旅と、ビジネスの成功、山々の中での素晴らしい日々を願っている。  J.R.R.Tolkien

 

改訂版のホビットについて語る
どんな徹底的な種類のどんな修正も不可能であるし、不必要だ。しかし、まだまったくかなりの誤植がある。私は二度、と私は思っていますが、これらのリストを送った。今度は彼らが修正してくれていることを願っている。
小さな間違いもまたある、ファンの調査が明らかにした。そして私自身も発見した。
それらをただす機会があるであろうことを願っている。リストをまた同封る。

 

***********************

 

 「指輪物語」のbook1を、身内(インクリングスの仲間やクリストファー)以外に読んでもらって受け取った書評への返信。しかし出版まではまだまだ遠い。