るるむく日記

趣味にひた走るつれづれの日々

中世イングランドミステリ


毒杯の囀り ポール・ドーハティ 14世紀ロンドンを修道士探偵が行く!
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POPPIN BOOKS

本の帯と中表紙のあおりに惹かれていたところ、先日チャットでAさんにおもしろかったですよ、と背中を押されて購入。主人公は、百年戦争がらみで少々わけありの、アセルスタン修道士。彼は自分の教区の教会に奉仕すると同時に、修道院長の命で、ロンドンのシティの検死官、クランストン卿の書記兼代書人を勤めています。クランストン卿との仕事がらみで謎解きを行うという趣向のミステリで、大酒呑みで大食漢、基本性格善人、にぎやかなクランストン卿と、わけあり、引き気味、悔やみ気味、で静かなアセルスタンのコンビの造型も楽しませてくれるところです。秘密やら陰謀やらが目白押しなストーリーはもちろんおもしろかったのですが、それより何より、14世紀ロンドンという場所と時間の描写がとても良かったです。獣脂のろうそくをじりじりいわせながら写本をするような夜の暗さ、下水溝からあふれた汚水や、むせかえるような匂いの篭もる、雑駁な下町の様子、そういった雰囲気がダイレクトに伝わってくる話で、このあたりの時代が好きな方にはとても魅力的な本だと思います。