るるむく日記

趣味にひた走るつれづれの日々

ヴェニスの商人

B00075HULAMerchant of Venice
A l P a c i n o , 㠀 ? J e r e m y I r o n s

MGM Home Ent. (Europe) Ltd 2005-04-11
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観てきました。とても良かったです。とにかく、俳優さん良し、衣装や建物などのディティール良し、そして映画として丁寧に作られてあって、とても端正な印象で、良かったです。
話は基本的にシェークスピアの原作の通りでそれをどう解釈するかという見せどころだったかと思いますが、怒りと哀しみのシャイロック、バサーニオの一種傲慢な若さや、ポーシャの美しさとかしこさとそして若い娘らしさ、そしてアントニーオの愁いと諦念が重なりあいながら、観る方にせまってきました。3組のカップルの行方と裁判の行方の落ち着き先が、原作を読んで思っていたものとは少し雰囲気の違う微妙な陰翳を感じたりと本当に奥行きのある映画に感じられました。


ここからネタバレ


私にとってはアントニーオの造型が実は意外でした。シャイロックがただの守銭奴でなく、というのはアル・パチーノが演じるのだし、ただのワルモノにはならないだろうというのでそれほど意外感はなかったのですが、(もちろん素晴らしい演技でした)アントニーオが意外でした。

というのも私が大昔に原作を読んだ時に持っていたアントニーオのイメージは、若くて ― それはバサーニオよりは多少年長ではあるかと思っていましたが、 ― 若さからくる自分と自分の周りに対する絶対感(失敗する事はないというような)を持っていて、現世の利益を享受してそれを当然とするような、なんというかバイタリティにあふれる快活な青年(もしくは壮年)といった印象だったのです。映画のジェレミー・アイアンズアントニーオは、始めからなんだか厭世観があって、疲れている風でなんだか微妙に投げやりに見えてちょっと驚きでした。


パンフレットにはアントニーオがバサーニオに対してゲイ的な愛情を抱いているかもしれない、というような事が書いてあったのですが、もしそれがそうだとしたら、バサーニオの結婚で彼を失う事が厭世観の原因という事になるのかもしれませんが、ただそう、というにはもうちょっと何かがあるような気がしました。それは年齢的な衰えというか、若い頃の万能感が薄れてしまって、そうして今自分の手元にあるものの少なさに気付いて愕然としてしまうというようなうっすらとした孤独感というか。だから、この映画のシャイロックアントニーオは、対照的なようでいて妙な孤独感という点でどこかつながっているような不思議な印象を受けました。