るるむく日記

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Letters of Tolkien No.92


Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection

 

 

92:1944/12/18 (FS68) クリストファー・トールキン宛て


お前自身のニュースはある点においては、私の運命に対するあきらめをつけ加えない。

しかし、おまえが今までの何よりもそれの一部を楽しんでいるように思われるにつれ、私はそれになぐさめを見出す。

私は真に願えたらよかったのだが、お前がそんなんにもぞっとするような何かを何もしないで済んでいたら、と。

 実際、私にとってはつらい試練だー私の息子がこの現代のモレクセム族の神 恐ろしい犠牲を要求するもの)に仕えてしかるべきであることは。

 

今朝は 少しの間私はルイスと会った。彼の4作目(5作目?)の小説ができかけていて、私のものと衝突しそうだった(私のぼんやりとした三つ目の企画)。

 

脚注:1945年に出版されたルイスの「The Hideous Strength(サルカンドラ いまわしき砦の戦い )]と「The Great Divorce(天国と地獄の離婚 )]の次に出版された小説は1950年の「ライオンと魔女」だった。

トールキンはしかしながら、ほとんど、あきらかに、完成しなかったルイスのほかの本について言及している。

トールキンの3つめの曖昧な企画、というのは[ the nortion club papers]だろう 。この本は、「ある伝記」によれば、インクリングスそのものを設定としていて、タイトルにある、気の置けない文芸的なクラブのメンバーのオックスフォードの二人の教師が時間旅行に出発する話だそう

 

  私はこの頃、先史についての新しいアイデアをたくさん得つつある。そしてそれらを長く棚上げしていた、私が書き始めたタイムトラベルの物語に組み入れたいと思っている。

ルイスはセトとカインの子孫についての物語を計画しはじめている。

我々はまた、「言語」(性質、語源、働き)についての共同での本を書く事を考え始めている

 

脚注:ルイスは1948年の夏に彼を訪ねたチャド・ウォルシュに言っている。「この本は「Language and Hnman nature」と呼ばれるはずだった。そしてthe Student Christian Movement Pressから翌年出版されるはずだった。しかしなされなかった。」

1950年にルイスは友人に手紙を書いている トールキンとの私の本はーあの偉大な、しかしずるずる引き延ばす非組織的な男とのどんな共著本もー、日付を入れられるが、私はそれがthe Greek Calends(存在しない日付)であることを恐れている。

 

これらすべてのプロジェクトに(十分な)時間があればいいのに!

 

前半部分はおそらく、クリストファーさんからの空軍で訓練などを含めたあれこれに対する感想と意見なのだろうと思います。

そして後半はルイス氏とのあれこれ。結局共著は出なかったわけですが・・・

the nortion club papers」は気になります。原稿として少しは残っているようですが、まったく完成しなかった模様です。ある伝記によれば、「導入部が終わって実際の時間旅行の上っ面が書かれたところで突然終わる」だそうです。ただ、このお話の中に入っていた詩は「イムラヴ」として活字化されています。

2002年のユリイカの指輪特集号に辺見葉子さんの訳で「イムラヴ 航海譚」が載っており、この詩についての辺見さんの解説がのっていて、ノーションクラブペーパーズへの言及もありました。読んでいたはずなのにすっかり忘れていたという・・・