Letters of J.R.R. Tolkien: A Selection
- 作者: J. R. R. Tolkien
- 出版社/メーカー: HarperCollins
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: ペーパーバック
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93:1944/12/24 (FS70) クリストファー・トールキン宛て
おまえが(指輪の)つぎの三つの章を楽しんでくれたことを喜んでいる。私は
より多くのコメントを切望している。おまえの時間があるときに。
確かに、サムはもっとも綿密に書かれたキャラクターだ。最初の本のビルボの後継者で、本物のホビットだ。
フロドはそれほど興味深いものではない。なぜなら彼は高潔であらねばならないし、いわば、使命を持っているからだ。
本はおそらくサムで終わるだろう。
フロドは、もちろん、あまりに高潔すぎるようになるだろうし、偉大なクエストを達成することにより隔絶されることになる.
そしてすべての偉大なるものたちと共に「西」へと立ち去るだろう。
しかしサムは、シャイアに庭に、宿屋に腰を落ち着けるだろう。
ところで、おまえはHarebell(イトシャジン)とそれを訂正したHairbell(harebellの代替)と書いてきた。
どこをおまえがおもしろがったかはわからないが、私はこの名前についてのすべての物事をかつて調べた。
名前の変遷とその想像で作られた代替のhairbellは、(語源学の)無知によるものと我々を誤らせる、おせっかいな、そしてfolk'sglove(妖精の手袋)から foxglove(狐の手袋)に試したたぐいの、昨今の本の植物学者のせいであるように思われる。
これらの動物との古来の関係はほとんど知られていないか理解されていない。おそらく、それらは、幾分は失われた獣の寓話に拠っている。名前に似合ったいくつかの寓話を作ったり試したりしたくなるだろう。
おまえはまだお前が出会った名前のない花々に、名前を作り出してつけているだろうか?
もしそうなら、心にとどめておきなさい、古き名前は常に説明的なわけでなく、しばしば謎めいたものなのだ。
私の一番の発明はエラノールとニフレディルだ。私は、ローハンの塚山に見いだされる、シンビルミネ、もしくは忘れじ草が好きだけれども。
私は最後にサムの庭のためにもう少しいくつかのものを発明すべきだったと考えている。
手紙の前半は指輪物語の草稿について。大筋はもう決まっていて、このあらすじの雰囲気からすると、もう、決定稿とあまり変わらない感じがします。
後半は植物の名前とその語源について。「Bluebellがカンパニュラに分類されてきたけど、スコットランドのBluebellはもちろんヒヤシンスでなくカンパニュラ」云々というくだりがあったのですが、
English bluebellというのがあってこちらはヒヤシンス科なんですね。教授にとってはEnglish bluebell がbluebellなのでしょう。ごぼうの話とか、「clofaはおそらく、glofaからの写本の間違いで名前の混同」など語源の話もあっておもしろい。
そしてミドルアースの花々の名前への言及。やはりエラノールはごひいきなのですね。